税金は場合によっては金額が大きくなるため、あらかじめどんな種類の税金がどれくらいかかるのか把握しておくことが大切です。
今回は、不動産売却でかかる税金の種類を紹介し、とくに譲渡所得税(所得税・住民税)に焦点を当てて計算方法を含めて詳しく解説します。
不動産売却で発生する税金は4種類
不動産売却で発生する4種類の税金を紹介します。
①印紙税
印紙税は、不動産を売却するときの売買契約書に収入印紙を貼ることで納付する税金です。
契約書に記載された売却金額により、以下のとおりに納付します。
- 500万円超~1,000万円以下:10,000円(5,000円)
- 1,000万円超~5,000万円以下:20,000円(10,000円)
- 5,000万円超~1億円以下:60,000円(30,000円)
- 1億円超~5億円以下:100,000円(60,000円)
※2022年(令和4年)3月31日までは(カッコ)内の軽減税率が適用されます。
②登録免許税
不動産売却時の所有権移転登記の際に必要になるのが登録免許税です。
売却による所有権移転の場合は固定資産税評価額×2%(2022年3月31日までは1.5%)が納税額になります
登録免許税は、買主が負担するのが一般的です。
③消費税
不動産売却に際し、不動産会社に仲介を依頼した場合には、仲介手数料に対して消費税が発生します。
そのほか司法書士に支払う手数料などにも消費税が加算されます。
④譲渡所得税
不動産を売却し利益が発生したときには、「譲渡所得」として所得税・住民税・復興特別所得税がかかります。
譲渡所得に対してかかるこれら3種類の税金は、まとめて「譲渡所得税」と呼ばれます。
これら譲渡所得税のうち、所得税と住民税について次章から詳しく解説していきます。
不動産売却で発生する譲渡所得税の概要と算出方法(所得税編)
不動産を売却して出た利益は譲渡所得と呼ばれ、給与やそのほかの収入とは分離して譲渡所得税(所得税と住民税)が課されます(分離課税)。
そのためまずは譲渡所得がいくらになるのかを算出する必要があります。
譲渡所得の算出方法
譲渡所得は、不動産を売った金額がそのまま所得とみなされるのではなく、以下の計算式を用いて算出します。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
このうち譲渡収入金額は、土地と建物を譲渡した代金の合計です。
取得費は、以下のうち金額の大きいほうを使います。
①土地建物の購入代金と取得に要した費用(仲介手数料や整地費など)を合計した金額から、建物の減価償却分を差し引いた金額
②譲渡収入金額×5%
土地建物を購入したのがずいぶん前で、当時の売買契約書などが残っておらず、購入代金を明らかにできないときなどは②で算出した金額を取得費とします。
譲渡費用に関しては、売却にかかった金額を合計します。
たとえば土地や建物を売るために不動産会社に支払った仲介手数料、土地の売却で測量をした際に支払った代金、登記や登録に要した費用などです。
課税譲渡所得を算出する
譲渡所得が算出できたら、課税譲渡所得を計算します。
課税譲渡所得は、以下の式を用います。
課税譲渡所得=譲渡所得-(特別控除)
実は譲渡所得には、さまざまな特例が用意されています。
たとえば売却した不動産がマイホームだった場合には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例(3,000万円特別控除)」が適用されます。
これは、マイホームを売ったときには所有していた期間の長短に関係なく、発生した譲渡所得から最高3,000万円まで控除される特例です。
つまり、譲渡所得の計算式
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
で算出した譲渡所得が3,000万円以下なら、実質的に譲渡所得は発生せず、税金の支払いは不要になります。
たとえば、
①譲渡収入金額:5,000万円
②取得費:2,500万円
③譲渡費用:250万円
だった場合、譲渡所得は
5,000万円-(2,500万円+250万円)=2,250万円
と計算されます。
本来なら2,250万円に対し所得税が発生しますが、マイホームだった場合には3,000万円が控除されるので、
2,250万円-3,000万円=-750万円
となり、課税所得がマイナスとなるため税額は0円となるのです。
譲渡所得に関しては、このほかにも以下のような特例があります。
- 10年超所有軽減税率の特例
- 特定居住用財産の買換え特例
特例が適用されると大きく節税できるため、譲渡益が発生した場合には対象となる特例がないかをよく調べることが大切です。
所得税額の算出
特例を適用しても譲渡所得がある場合には、以下の税率を用いて所得税を計算します。
税率は不動産の所有期間が5年以下か5年超かによって異なります。
5年以下(短期譲渡所得):30.63%
5年以上(長期譲渡所得):15.315%
居住用住宅の売却で、10年超所有軽減税率の特例が適用された場合は以下の税率が適用されます。
課税譲渡所得6,000万円以下の部分:10.21%
課税譲渡所得6,000万円超の部分:15.315%
※上記所得税の税率には、復興特別所得税(所得税×2.1%)が上乗せされています。
なお、譲渡所得を計算するときには、譲渡した年の1月1日までを所有期間とします。
たとえば2015年の6月に購入した不動産を2020年の12月に売却した場合、カレンダー上では5年が経過していますが、1月1日時点では5年が経過していないので短期譲渡所得とされます。
2021年1月1日移行なら長期譲渡所得となり、税率が半減するため、5年前後で不動産を売却する際には十分注意が必要です。
不動産売却で発生する譲渡所得税の概要と算出方法(住民税編)
譲渡所得が発生した場合、所得税以外に住民税も課されます。
住民税は、地域社会にかかる費用をその地域に住む住民が負担するものです。
前年の1月1日から12月31日までの所得に対し、その年の1月1日現在に居住していた自治体から課税されます。
譲渡所得に対して課される住民税の算出方法を確認しましょう。
譲渡所得に対する住民税の算出方法
譲渡所得に対して課される住民税は、所得税と同様に、不動産を所有していた期間が5年以下か5年超過によって以下のように異なります。
5年以下(短期譲渡所得):9%
5年以上(長期譲渡所得):5%
居住用住宅の売却で、10年超所有軽減税率の特例が適用された場合は以下の税率が適用されます。
課税譲渡所得6,000万円以下の部分:4%
課税譲渡所得6,000万円超の部分:5%
たとえば7年間所有した不動産に譲渡所得が1,000万円発生した場合には、1,000万円×5%の50万円の住民税が課される計算です。
不動産を売却した場合、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、譲渡所得を確定します。
その結果譲渡所得が発生したら、会社員の場合は給料から天引きされる特別徴収で住民税を納付します。
もしくは普通徴収として納付書で支払うことも可能です。
その場合、6月・8月・10月・翌1月の4回に分けるか、1回にまとめて納付するのが一般的です。
まとめ
不動産を売却すると、さまざまな税金が課されます。
しかしマイホームであれば3,000万円の特別控除が適用されるなど、節税で活用できる特例がいくつかあります。
まずは自身に適用される特例がないかを調べることが大切です。