任意売却が完了するまでの期間や流れ
任意売却でより早く、少しでも高く売るためには、任意売却の流れを理解しておくことも大切です。ここでは、任意売却が完了するまでの期間や流れを解説します。任意売却が完了するまでは、通常早くても3か月~6か月ほどかかるといわれています。任意売却の流れを以下の表でチェックしてみましょう。
●任意売却の期間や流れ
住宅ローンを滞納すると金融機関から「督促状」といった書面、または「督促」に関する電話が来ます。このような「督促通知」を受け、返済が厳しいようなら金融機関と相談して任意売却を検討し始めた方がよいでしょう。
それでも支払いがない場合、滞納3か月~6か月で保証会社(ローンで保証会社を利用している場合)から「代位弁済の通知」が届きます。この通知は、保証会社が借りている人に代わって金融機関に支払いをしたことで、住宅ローン債権が金融機関から保証会社に移ったことになります。この段階を放置しておくと、不動産の差し押さえなど競売のための準備が開始されてしまいます。
[ 2 ] 現状の把握(金融機関との相談・協議)
住宅ローン滞納状況や残債の状況などを金融機関に連絡して把握します。返済が厳しい場合は、できれば上記の督促が来る前にできるだけ早く金融機関に相談することが必要です。
ローンを借りている金融機関に状況を確認したら、早めに任意売却を含めた返済に関して金融機関と相談、協議することが先決です。その後、任意売却の方向となった場合には、任意売却に関する知識を持つ専門業者や不動産会社などに相談しましょう。
[ 3 ] 不動産会社の選定と価格の査定
任意売却を想定した不動産の査定を行います。不動産の価格査定は複数の不動産会社に依頼することができます。査定金額が不適切で任意売却のうちに売却できないと、競売の手続きに移行されてしまう可能性もあります。通常の売却よりも不動産会社は慎重に選ぶようにしましょう。
任意売却を行うには、売却価格・売却(返済)時期・売却後の残債の有無などを債権者に相談して同意を得る必要があります。任意売却の売却活動が始まってからも引き続き債権者に確認をしながら進めていきます。なお、売却後にもローンの残債が残る場合は、その返済方法や金額などについても金融機関に相談しながら計画を立てます。
[ 5 ] 任意売却の開始
不動産の任意売却を開始します。一般の不動産売却と同じく不動産会社に仲介を依頼する媒介契約を締結してから売却活動が行われます。
任意売却の場合でも、通常の不動産売買と同様に内覧などがあります。内覧とは、物件の購入希望者が建物内の状況を見学することです。内覧の際には、購入希望者へ少しでもよい印象を与えるためにも室内をきれいに掃除しておきましょう。
できるだけ早めの売却を目指しますが、任意売却でも通常の仲介による売却活動と同様に媒介契約が専任媒介や専属専任媒介の場合は、契約期間は最大3か月という期限があります。
また、なかなか買手が見つからないときは、任意売却できる期間内に売却できるよう売却金額を下げるといった条件の変更も必要になります。
[ 6 ] 売買契約の締結
買主が見つかったら、売買契約を結ぶ前に債権者と最終的な調整を行います。債権者である金融機関から売却条件について合意が得られれば、買主と売買契約を締結します。ここでスムーズに合意を得るためにも、売却活動中も債権者とこまめに話し合いをするようにしましょう。
ちなみに、任意売却では、一般的な不動産売買とは異なるため、売主である所有者が不利益になることのないように契約の際、以下のような2つの特約を盛り込むことが通例です。
●債権者から合意が得られなかった場合の白紙解約
特約の1つが、「債権者から抵当権抹消の合意が得られなかった場合の白紙解約」です。任意売却では、いよいよ契約という段階になっても急に債権者から売却許可を取り下げられる可能性があります。
たとえば、債権者が複数いて債権者間での話し合いがこじれたり、売却価格以外の条件が金融機関の想定と異なることなどから生じるもので、所有者である売主にはどうすることもできません。
しかし、買主にとっては購入しようとしていた不動産が土壇場で急に手に入らないとなると問題です。通常の不動産売買では、買主から違約金などを請求される事態に及ぶでしょう。これを回避するために白紙解約の特約が盛り込まれています。
●契約不適合責任の免責
特約のもう1つは、「契約不適合責任の免責」です。これは、一般的な不動産売買の際に売主が責任を負うことになる「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」について、任意売却では、責任を負うための資金などが売主にないため、その責任を問われないようにするための特約です。
契約不適合責任とは、不動産を売却した後、契約内容に合致しない欠陥や不備が見つかった場合に、その修理や賠償などについて売主が負う責任のことをいいます。
任意売却では、債権者のための売却という意味合いもあるため、その後の経済的負担がないように、この責任を負わなくてよくするための特約を盛り込んでいます。
[ 7 ] 不動産の決済・引渡し
売主の売却資金の分配や残債についての返済といった条件が決まり、また買主側の購入準備が整えば、不動産の決済・引渡しとなります。不動産の決済・引渡し日に売主が受け取った資金でローンの残債を返済し、抵当権の抹消手続きと同時に所有権を買主に移転します。
売却資金でローンの残債が完済できない場合は、売主は、物件を買主に引き渡して完了ではありません。決済後、残債の返済についての返済に関する契約書などを金融機関と締結し、決済後も返済など債権者との関係は続きます。残債が残る場合はその返済について、決済前に債権者との調整は綿密に行いましょう。
[ 8 ] 残債務の返済
任意売却後にもローンの残債が残ってしまった場合にはその返済が必要になります。残債務の返済は債権者と協議して計画を立て、前述のとおり改めて返済のための契約を結びます。無理のない返済額となるようよく債権者と相談しましょう。
任意売却の流れは、物件の状態や債務状況によっても変わります。ここで紹介した流れはあくまで目安ですが、任意売却をスムーズに進行するための参考にしてみてくださいね!
任意売却前後で行うとよい3つのこと
任意売却の流れが分かったところで、任意売却の前後に行っておくとよいこともご紹介しましょう。以下の3つを意識することで、少しでも不安要素を軽減しておきましょう!
[ 1 ] マンションの場合は管理費の清算
売却する物件がマンションで管理費や修繕積立金を滞納していた場合には、任意売却を進める前に可能なら清算をしておきたいものです。管理費や修繕積立金を滞納したままでは、管理費等の滞納金はそのまま買主に承継されてしまいます。一般的に管理費や修繕積立金が完済していることが売却の条件になることもあるため、事前に清算しておくほうがよいでしょう。
ただ、そもそも任意売却を行う状態では、売主が管理費や修繕積立金を精算することが難しい場合がほとんどです。その場合は、売却金額から精算することを前提に金融機関と相談することも必要です。
[ 2 ] 売却にかかる費用の確保
任意売却でも通常の売買取引と同様に売却の諸経費はかかるので、できればその費用を確保しておきたいものです。売却資金からこれらの費用を充てることについて、債権者と相談することが一般的です。なお、任意売却でも通常の売却と同様にかかる費用の内訳は、主に以下の通りです。
・不動産会社への仲介手数料
・抵当権の抹消登記の費用
・戸建てや土地の売却では、測量費用
・建物設備の修理費、残置物の撤去や処分費など
ほかにも、住宅ローンの返済手数料や遅延損害金などがありますので、覚えておきましょう。
[ 3 ] 売却後の引越し・生活の相談
可能であれば、売却後の引越し代や当面の生活費について債権者と早めに相談しておくとよいでしょう。任意売却の場合、事情を説明して債権者に交渉することで、売買代金のなかから引越し代や当面の生活費用を出してもらえるケースがあります。
しかし、それだけでは足りなかったり、そもそも費用を出してもらえなかったりする可能性もあります。親戚や知人などでまとまったお金を貸してもらえるような人はいないか探してみることも選択肢に入れておきましょう。
ローンの返済ができなくなる前に、売却を検討しよう!
今暮らしている家を競売にかけられてしまうと、売却金額や引渡しの時期、情報の非公開など所有者である自分の希望が通りにくくなります。また、競売では売却金額が一般的な売却に比べて低くなる傾向があるため、売却資金はほぼ手元に残りません。
売却資金からその後の生活費を出してもらうこともできず、その後の生活が困窮してしまう可能性もあるのです。
売却金額が一般的な売却に近くなる任意売却を成功させることで、住宅ローンの残債を完済できたり、その後の生活費を確保できる可能性があります。「住宅ローンの返済が厳しい…」と感じ始めたら、まずは金融機関にローン返済について相談してみてください。
それでも難しそうなときは、できるだけ早めに任意売却について金融機関と相談することをおすすめします。ローンの返済が苦しくなったら、経済的にも精神的にも、なるべく負担がかからないよう、正しい知識を持って、早めに対処しましょう!