1.中古住宅購入時の税制優遇制度
まずは、中古住宅の購入時に利用できる、2つの税制優遇制度を解説します。
受け取れる金額が大きく、メリットがある制度なのですが、どちらも申請が必要なので気を付けましょう。
1-1.最大210万円の減税効果「住宅ローン減税(控除)」
住宅ローン減税(控除)とは、年末のローン残高の0.7%が、所得税などから10年間減税(控除)される制度です。控除額は、以下のように計算します。
たとえば、2000万円の住宅ローンを組んで中古住宅を購入し、年末の住宅ローン残高が1900万円とするなら、その0.7%である13.3万円が、その年の所得税から控除されます。
中古住宅の場合、購入した建物が適用要件を満たしていれば、10年間で最大210万円が所得税
中古住宅の中でも、「長期優良住宅」「低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」のいずれかであれば、控除対象となる住宅ローン借入限度額が3000万円まで引き上がり、控除額も大きくなります。
長期優良住宅とは、「劣化対策(劣化対策等級3以上)」「耐震性(耐震等級2以上)」「維持管理・更新の容易性(維持管理対策等級3以上)」「省エネルギー性(断熱等性能等級4以上)」「維持保全計画」などの項目について、すべて認定基準を満たす必要があります。
低炭素住宅とは、二酸化炭素の排出が抑制されている省エネ住宅のことを指し、「断熱性」「省エネルギー性」「低炭素化措置」を満たす必要があります。
※参考 国土交通省「長期優良住宅認定制度」、「低炭素建築物認定制度」
ZEH水準省エネ住宅とは、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅のこと。高い断熱性や、高効率な設備を導入することで、従来より20%以上もの省エネを達成する建物です。
省エネ基準適合住宅とは、窓や外壁などの熱性能が高く、さらに設備機器などのエネルギー消費が抑えられている住宅を指します。建物が建っている地域によって基準は異なりますが、その地域の水準を満たしている必要があります。
中古住宅の購入で住宅ローンを受けるには、以下の要件を満たすことが必要です。制度の適用を受けるには、初年度に確定申告が必要です。減税効果が非常に大きい制度なので、中古住宅を購入した年は、確定申告を忘れないようにしましょう。なお、翌年以降は会社員であれば年末調整で対応できます。
1-2.最大1000万円が非課税「住宅取得等資金贈与の非課税特例」
住宅取得等資金贈与の非課税特例は、住宅の取得のための贈与であれば一定額まで受贈者(お金をもらう子供)に贈与税を課さないという制度です(令和5年(2023年)12月31日までの時限措置)。
贈与税は非常に税率が高いので、多額の住宅資金をもらうときは、ぜひこの制度を利用したいところです。新築住宅における非課税限度額の範囲は、下表のように定められています。
中古住宅における「質の高い住宅」とは、以下のいずれかの基準に適合する住宅を指します。
ただし、非課税特例の適用を受けるには、贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日までに、住所地の税務署に贈与税の申告書を提出する必要があります。
2.中古住宅購入時の補助金
中古住宅を購入する際に使える、補助金制度について紹介します。金額が大きい補助金もあるので、確認しておきましょう。
2-1.中古住宅向けの「自治体の補助金」
中古住宅を購入する際、自治体によっては補助金を出しているケースもあります。
たとえば、東京都墨田区では、子育て世帯が親世帯と同居、または近居するために新しく住宅を取得した場合、その費用の一部を助成する「墨田区三世代同居・近居住宅取得支援制度」があります。
中古住宅購入の補助金制度は、すべての自治体に存在するわけではないため、まずは自分が住んでいる自治体で補助金の有無を調べ、申請方法などについても確認してみましょう。
2-2.補助金をもらうときの注意点
補助金については注意点が2つあります。
1、確定申告書の提出の際、住宅の取得に関し補助金の交付を受けた場合には、その住宅の取得等の対価の額または費用の額からその補助金等の額を控除して(特定増改築等)住宅借入金等特別控除を計算する必要があります。
2、一部補助金は併用できません。
以上の点について、気をつけましょう。
3.中古住宅購入時の減税制度
次に、中古住宅の購入時に使える減税制度を見てみましょう。
3-1.「登録免許税」の軽減制度
中古住宅では、一定の要件を満たしていれば「建物」の登録免許税が軽減されます。登録免許税とは、登記簿謄本に権利の設定などをする際に法務局で支払う税金のことです。登記時に発生するものなので、支払いは一度きりです。
登録免許税の税額は、以下の式で算出されます。
登録免許税の軽減を受けるには、購入した建物が、以下の要件を満たしている必要があります。
昭和57年より前に建築された住宅は、「新耐震基準の適合証明」や「既存住宅売買瑕疵担保責任保険の加入」があれば、軽減税率が適用されます。適合証明書は、指定の確認検査機関や建築士事務所に所属する建築士などに依頼すれば発行でき、費用はだいたい5~10万円です。
なお、物件ごとの税率は以下の通りです。
この軽減措置を利用すると、一般的には、数万円~十数万円程度、登録免許税が安くなります。
なお、土地の登録免許税は、令和5年(2023年)3月31日までに登記をすれば、税率2% → 1.5%に軽減されます。要件は期日のみで、面積などは関係ありません。
参考:国税庁「土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」
3-2.「不動産取得税」の軽減制度
「不動産取得税」とは、土地や建物といった不動産を取得した際に支払う都道府県税です。そのため、支払いは一度きりです。
中古住宅を購入した場合、土地や建物を取得した旨を、定めれられた日(※各自治体によって期限は異なる)までに都道府県税事務所に申告します。申告から6カ月~1年後をめどに納税通知書が届くので、その分を納付します。
不動産取得税の計算式は、原則として以下の通りです。建物、土地、それぞれ別に計算します。
3-2.「不動産取得税」の軽減制度
「不動産取得税」とは、土地や建物といった不動産を取得した際に支払う都道府県税です。そのため、支払いは一度きりです。
中古住宅を購入した場合、土地や建物を取得した旨を、定めれられた日(※各自治体によって期限は異なる)までに都道府県税事務所に申告します。申告から6カ月~1年後をめどに納税通知書が届くので、その分を納付します。
不動産取得税の計算式は、原則として以下の通りです。建物、土地、それぞれ別に計算します。
不動産取得税の軽減措置については、土地と建物で要件や計算方法が異なっています。まずは、ひとつずつ確認していきましょう。
【不動産取得税の軽減(建物)】
まずは、建物の不動産取得税の軽減措置を見ていきましょう。
令和6年(2024年)3月31日までに取得した分については、税率が3%に軽減されます。また、取得した中古住宅が要件を満たしている場合、課税標準額に対して控除があり、以下のような計算式になります。
物件の要件は、以下の通りです。
不動産取得税は都道府県税であるため、控除額は都道府県によって異なりますが、控除額の一例を示すと下表の通りです。
※参照:東京都主税局「中古住宅とその敷地を取得した場合(個人が自己の居住の用に供するもの」
【不動産取得税の軽減(土地)】
令和6年(2024年)3月31日までに取得した土地については、減税措置がなされているため、計算式は以下のようになっています。
※控除額は(ア)(イ)のうちいずれか大きい額
(ア)45000円
(イ)(土地1㎡あたりの固定資産税評価額 ×1/2)× (住宅の課税床面積の2倍 ※200㎡が限度)×3%
まず、固定資産税評価額は2分の1に減額、さらに税率が3%になります。
さらに控除も発生します。控除額は(ア)45000円、(イ)(土地1㎡あたりの固定資産税評価額 ×1/2)× (住宅の課税床面積の2倍 ※200㎡が限度)×3% のうちいずれか大きい方が採用されます。
計算はややこしいですが、この計算式を採用すると、一般的な住宅地の広さ場合、土地の不動産取得税は0円に近くなることも多いです。
不動産取得税については、土地部分はほとんど税金がかからないので、建物部分が要件を満たすかどうかで、税額に差が出ます。
なお、不動産取得税の軽減を受ける場合には、「不動産取得税の申告書」を提出する必要があります。不動産を取得してからだいたい60日以内(各自治体によって期日は異なります)に、各都道府県税事務所の窓口に申請します。
3-3.固定資産税の軽減
中古住宅では、一定の要件を満たす改修(リフォーム)を行うと、建物の固定資産税が減額される措置もあります。
固定資産税とは、1月1日時点の不動産の所有者に課される市区町村税(東京23区は都税)のことで、「納税通知書」の金額通りに、毎年支払うものです。
この固定資産税は、改修(リフォーム)工事を行うと、その内容に応じて減額されます。減額期間は工事後から1年間と、それほど大きな減税効果はありませんが、対象となる改修(リフォーム)工事を行ったのであれば必ず申請しましょう。
改修(リフォーム)工事の種類と、減額割合は以下の通りです。
上記の改修工事は、令和6年(2024年)3月31日までの時限措置で、また、それぞれ50万円超の改修工事を行ったものが対象となります。
なお、上記の改修(リフォーム)に伴い、一般の住宅を長期優良住宅とする改修(リフォーム)を行った場合には、減額割合がさらに増える措置もあります。
参考:一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会 適用を受けたい場合には、各自治体の固定資産税課への申請が必要になります。
まとめ
中古住宅の購入時に使える、減税制度・税制優遇制度、補助金について解説しました。
中古住宅で減税制度・税制優遇制度・補助金を利用する場合は、要件をよく確認することが大切になります。要件では、建築年度や、耐震基準に適合しているかどうかといった、建物の安全性に関する点が重点的に確認されることになります。
中古住宅を購入したら、使える制度があるかなどをきちんと確認して、利用できる制度へは申請を忘れないようにしましょう。