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【私道所有者が道路の真ん中にポールを設置】そんなの許される?

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【私道所有者が道路の真ん中にポールを設置】そんなの許される?

カテゴリ:その他

査定や売却依頼の物件が、私道に面しているというだけで暗鬱な気分になるのは筆者だけではないでしょう。

まだ所有者と合って話をした訳でもないのに、過去の様々な経験が頭をよぎるからです。

もっとも私道を所有する方々が温厚で協力的な場合も多いですから「私道は何度も扱ったけれど、別段、それほど問題ないよ」という方は多いかも知れませんが、それは「運」が良かっただけかも知れません。

実際に判例などを調査しても「私道」に関しての事件が相応にあるのですから、いつトラブルになっても不思議ではないのが私道ではないでしょうか?

筆者の経験ですが、通行同意に関しかなり高額な金額を請求され「いくら何でもそれは暴利じゃないですか!」と余計なことを言ったがため所有者の機嫌を損ね、道路の真ん中に「車両通行禁止」の看板を建てられたことがあります。

「そんなの違法じゃないですか!」
「信義則に反している」

と思う方もおられるかもしれませんが、私道を単独所有していれば、私道を利用する必要のある受益者にたいして王様のように君臨し、通行掘削の同意を得ようとすれば高額なハンコ代を請求してくるなど、こちらがタジタジになるほど法律を熟知しています。

過去の判例を見ても侵入防止の看板やポールを立てることは一概に違法でもなく、また裁判においても問題行為ではないと判断される場合もあります。

一体、判断の分かれ目はどこにあるのでしょうか?

今回は私道に関しての判例を紹介し、その要旨からどのような点が重要視され明暗を分けるかについて解説します。


私道が売却されてしまったら通行できなくなる?

競売によらずとも私道が売買される、もしくは相続により所有権が移転された場合など新たな私道所有者との間で通行掘削権を争いトラブルになることもあるでしょう。

通行掘削同意を覚書等で締結し、私道売却時の継承義務を記載しているだけでそのようなトラブルを回避することはできるのでしょうか?

ここでは、そのような場合に参考になる判例を紹介します。

事件のあらましは下記のようなものです。

私設道路通行契約書を締結し、私道を承役地、その私道に面する土地を要役地として通行地役権の設定合意をしていたが、私道に設定されていた根抵当権を行使され競売にかかり、競落した第三者との間で地役権には瑕疵が存在するとしてその有効性が争われた事件
(最高裁三小判 平25・2・26 ウエストロー・ジャパン)

裁判は上告され最高裁まで持ち込まれましたが、最高裁は原審に差し戻しました。

最高裁の判示が長いので下記に要約します。

1. 既に設定されている通行地役権に係る承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかである。

2. そのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、特段の事情がない限り、登記がなくとも、通行地役権は上記の売却によっては消滅せず、通行地役権者は、買受人に対し、当該通行地役権を主張することができると解するのが相当である。

3. 上記の場合、抵当権者は、抵当権の設定時において、抵当権の設定を受けた土地につき要役地の所有者が通行地役権その他の何らかの通行権を有していることを容易に推認することができる上に、要役地の所有者に照会するなどして通行権の有無、内容を容易に調査することができる。

4. 通行地役権者は抵当権者に対して、登記なくして通行地役権を対抗することができると解するのが相当であり、担保不動産競売により承役地が売却されたとしても、通行地役権は消滅しない。

このような論理により差し戻しとされた訳ですが、原審においても要役地所有者の主張は認められており(通行地役権は有効とする判断が示された)それを不服として承役地所有者が上告したのです。

最高裁は通行地役権を認めるとする一方で、原審にたいし「地役権設定当時の状況について審理をつくさず通行地役権者が買受人に対し、通行地役権を主張することができると判断しており、その部分について審理を尽くす必要がある」として差し戻しています。

つまり判断は妥当だと思われるけれど、地役権設定の有無も含め承役地と要役地の過去からの関係性などを考慮し通行権が判断されなければならず、原審で審理が尽くされているとは言い難い状況のようだからもう一度、じっくりと考えてみてねということです。

私達が通常使用している「通行掘削同意書」の覚書等にも、私道を譲り渡す場合における通行掘削権の継承について文言を記載していることが多いかと思いますが、このような書類があるからといって私道を譲り受けた第三者にたいし当然に通行権等を主張できると、単純には考えないほうが良いでしょう。

また新たに私道の所有者となった場合においても、過去の経緯や現状、私道として日常利用されているという現実を無視して自信の都合よく変更を加えることは認められないと理解して置く必要があります。

いずれの場合でも裁判で争われる可能性も含め、地役権の設定や、通行掘削同意書等を締結した当時の位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであると証明できるようにしておくと良いでしょう。

自動車の通行を前提とできるか?


私道に面する一戸建て住宅であっても敷地内に駐車場を確保でき、かつ私道の幅員が自動車の走行に問題ないものであれば、自動車を所有し利用することでしょう。

とくに公共交通機関等のアクセスが良くない場合、自動車がなければ日々の買い物等、生活に支障をきたします。

私道の位置、形状、幅員等の物理的状況から自動車が無理なく通行できるのであれば、通行同意は自動車の通行も前提であると考えがちですが、本当にそうでしょうか?

自動車の通行を前提とすることが有効かどうかについては、判例が数多く存在しています。

まず利用している道路の通行権が、囲繞地にたいしてのものか、それとも私道であるかに分けて考える必要があります。

まず囲繞地の場合について考えてみましょう。

民法第210条は「公道に至るための他の土地の通行権」いわゆる囲繞地通行権について定められており「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」と、通行権は当然に与えられるべきとしています。

ただし何の制限もなく通行を認めている訳ではありません。

続く民法第211条では「通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ他の土地のために損害がもっとも少ないものを選ばなければならない」としているからです。

これらの条文は宅地建物取引士の試験に出題されますから皆さんも良くご存じかと思います。

ただし損害がもっとも少ないものを選ぶという定めにより「自動車の通行は全て認められない」と単純に受け取りがちですが、必ずしもそうではありません。

自動車を通行させる必要性と、それによる損害の程度を総合的に判断する必要があるのです。

実際にそのような自動車の通行権を巡っての判例も確認できます。

そのうちの一つを紹介しましょう。

自動車による通行を前提とした囲繞地通行権を有することの確認を求めた事案において、1審は囲繞地通行権を否認し、控訴審も原告=控訴人の主張する通行権を失当としたが、控訴審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして破棄・差戻された事件です
(最高判 平18・3・16 金商1250-2)

この事件では、承役地所有者が自動車の通行を防止するため道路部分にポールを立て往来を禁止したことから、要役地所有者がポールの撤去、及び自動車による通行権を求め争そった事件です。

まず原審においては「囲繞地通行権では自動車通行を前提とすることはできない」として、ポールの撤去や自動車通行権が棄却されました。

それを不服として原告(要役地)により上告されました。

この上告において最高裁は、民法210条(囲繞地通行権)の成否ではなく、自動車の通行を前提とする第210条通行権が成立するか否かという点のみが審議されなければならないとして審理を差し戻しています。

要旨は以下のような内容です。

「自動車による通行を前提とする本条1項の通行権の成否及びその具体的な内容は、他の土地について自動車による通行を認める必要性、周辺の土地の状況、自動車による通行を前提とする通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断されなければならない」

つまり囲繞地通行権における「土地のために損害がもっとも少ないものの選択」は、たんに徒歩による通行のみを意味しているのではなく、不利益等の諸事情や利用状況等などを総合的に考慮しなければ、直ちに判断できるものではないとして、諸事情を考慮せず否定した原審を差し戻したのです。

このことから囲繞地だからといって短絡的に自動車の通行が認められないと判断するのではなく、これまでの経緯や必要性、それによる不利益の程度などを総合的に考慮して交渉する余地があると学ぶことができます。

2項道路だからといって自動車通行が直ちに認められる訳では無い

前項は囲繞地通行権の前提として自動車通行が認められるかを争った判例でしたが、これはあくまでも囲繞地であり、建築基準法第42条2項道路、いわゆるみなし道路であるからといって自動車通行が問題なく認められると考えるのは早計です。

建築基準法第42条2項道路に指定されていても、私道である以上、自動車の通行が直ちに認められる訳ではありません。

この場合にも総合的な判断が求められます。

一例を紹介しましょう。

建築基準法42条2項規定の道路に金属製ポールを設置して自動車の通行を妨害し、それにより道路利用者が金属製ポールの撤去を求めた平成8年の東京高等裁判所の判例です。

判決で撤去の訴えは棄却されました。

判決の要旨はこうです。

「建築基準法第42条2項道路規定により指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、その道路の通行を妨害されたときは、私道所有者が通行を受任することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなど特段の事情が無い限り、私道所有者にたいし妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利を有する」

として、まず私道を日常的に使用している受益者は私道の妨害を排除する権利、つまり人格権的権利を有していると、訴えの根拠については合法であると認めています。

ただしそのうえで「私道の通行受益者が日常において徒歩や二輪車で利用している現状、さらに妨害物の撤去を求める理由が、賃貸駐車場として自身の敷地を利用することであり、自動車の通行について日常生活上不可欠の利益を有しているとはいえない」として障害物の撤去を求めることはできないと判決しました。

これが買い物や通勤など日常的に自動車を利用しているという実態があれば判決も変わったのではないかと思われますが、争いになった場合、双方の私道利用による不利益等の諸事情や利用状況等などが総合的に判断材料とされている点に注目すべきでしょう。

まとめ

今回は私道等における自動車の通行を妨害する行為が裁判に持ち込まれた場合、裁判所がそのような点に注目し判断を行っているかについて判決の要旨も含め解説しました。

お読みいただければお分かりになるように、囲繞地も含め徒歩による通行権が否定されることはありません。

ただし自動車の通行に関しては経緯や使用状況、私道所有者の損害程度などを総合的に考慮して判断される必要性から、一旦判決されても上告により原審に差し戻されるなど、判断の難しいことが確認できます。

そのように難しい判断を要する私道に関してトラブルに巻き込まれた場合、判例などを念頭に置き、かつ現状や過去の経緯などを正確に把握し、柔軟に対応していく必要があると言えるでしょう。

不動産業者としては頭の痛い問題ではありますが……。

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